お父さんはファラオ

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 テレビ放送のあと、意外と学校のみんなは騒がなかった。雷恩君の方は分からないけど。いつもだいたい黙っているから。学校のみんなが騒がなかったのは、多分もうずっと前からうちの家族構成がおかしいって知ってるし、イジョウだと思っているからだろう。 私たち家族はお父さんがなりたがってる有名人なのだ。テレビに出る前から。みんなテレビを見て新しいことなんかなかったはずだし、みんなとっくに自分の親から色んなこと聞いてるだろうし。だってうちはずっと前から……黒い噂の家族。  私が通りすがると立ち話をしていたヨソのお母さん達は決まって黙りこむ。そのことをお母さんに話したことがあるけど 「自信を持ちなさい 」とだけ言われた 。何に。じゃあお母さんは自信があるの、この家族の形に。たまに泣いてるくせに。お母さんが緑子さんと仲良く話ししているとなんだか胸がムカムカしてくる。  お母さんと妹と三人でこの家を出て行きたい。それが無理ならお母さんだけでもどこかに行っちゃえばいいんだ。私はさびしいけど、ここじゃお母さんが可哀想すぎる。でも大人の心はわからないから。私はお父さんのことが嫌いでも、お母さんはお父さんから離れられないのかも。そうだ忘れてた。もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだった。  あ……ピアノの音。雷恩君のピアノ。今夜の別れの曲はいつもよりもっと悲しい。やっぱり学校で何かいわれたのかな。
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