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ズカズカいっぱい人がきた。テレビクルーの人たちがきたの。妹二人に話を聞きたそうだけど、二人とも小さいから子ネコみたいに暴れまわってなかなか捕まらない。妹たちをあきらめたお姉さんがマイクを私にむけた。私は小学六年生だからちゃんとインタビューに答えた。
「えーとー、どう? 星羅ちゃんには二人のお母さんがいるって感じになるよね、早い話 。それってどんなかしら」
「フツーです」
「 平気だってこと?」
「そーです 」
「二人いて嬉しい?」
「 はい嬉しーです」
「どういう所が嬉しいと思う?」
「 みんながキズナでつながっている所です」
「キズナね。お父さんのことは好きですか?」
「はい好きです」
「お父さんは詩人ですよね」
「はい 」
「お父さんの詩をどう思う?」
「とても美しいと思います 」
「そうあなたはお父さんのことが好きなのね」
「はい 」
「でもお父さんに二人のお嫁さんがいるっていうのはちょっと戸惑うでしょう?」
「 いいえ」
「 あら何も思わないの?」
「はい新しい家族の形ですから」
「 そうかそうか。新しい家族の形だものね 。星羅ちゃんちは」
「はい 」
「幸せなんだ 」
「はい」
「ありがと。じゃあ、次はお兄ちゃんにも話を聞かせて欲しいんだけど」
この人たちは私たち家族を炎上させようと思っている。さらし者にしようと思っているんだ。ゼッタイそう。お母さんにも緑子さんにも色んな事をネホリハホリ聞いて。夜にヤルことなんかも 。いやだ、雷恩君にインタビューなんてさせたくない。今だって学校でいじめられてるのに。私は雷恩君が部屋で涙を流しているのを見たことがある。手にビリビリに破れた教科書をもっていた。この番組が放送されたら一体どうなっちゃうんだろう。──私も雷恩君も。
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