Die Kaiserwahl ~皇帝選挙~ 

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 だが、〝選挙〟とは銘打っているものの、近年はマグスミレニアスを輩出したハビヒツブルク家が皇帝位を世襲するような形となっており、ほぼ当選確実で擁立されたのが、この王侯貴族のサラブレッドとも呼ぶべきカルロマグノ一世である。  彼の父、フィリッポン美白公は帝国を構成する領邦国家の一つボゴーニア公国の領主であったが、フィリッポンは先代ボゴーニア公の王女メイとマグスミレニアス一世の息子であり、つまりカルロマグノはハビヒツブルク家の血を引く前皇帝の孫ということになる。  また、フィリッポンの妻――即ちカルロマグノの母フアンナはエルドラニアの女王イサベーリャ一世の娘であり、母の死後、彼女が王位を継承していたが、夫フィリッポンが急逝すると気を病んでしまい、カルロマグノは幼くしてボゴーニア公となった上に、イサベーリャ女王の夫でフアンナの後見人でもあった彼女の父エルゴン王フェルナンドロン二世も没すると、さらにはエルドラニア王へも即位したのである。  そして、今度は祖父マグスミレニアスが没したことで、第一継承権のあった祖父の領地、帝国の中心ともいえるハビヒツブルク家の本拠地エースタマーク公国も自らのものとして、気がつけばこのエウロパ世界で並ぶべきもののなき版図の統治者になっていた。  ちなみに外祖母イサベーリャ女王の時代、エルドラニアは遥か海の向こうに新たな大陸〝新天地〟を発見し、本国をも凌駕する広大な植民地を有するようになっていたが、これも今やカルロマグノのものということになる。  歳はまだ若いとはいえ、これほどの力を持つハビヒツブルク家の当主となれば、彼以外に次代の神聖イスカンドリア皇帝は考えられないであろう。  ところが、予想外にもその考えられない考えを持つ者が現れた……それが、現在の預言皇レオポルドス10世である。  聖界の最高権威である預言皇と俗世界の最高権力たるイスカンドリア皇帝は、長年、帝国内での優位性を巡って微妙な対立関係にあり、特に先帝マグスミレニアス一世が預言皇による戴冠を経ずして皇帝に即位したことで、両者の対立はますます顕在化するところとなっていた。  また、預言皇レオポルドス10世は本名をジュルアーノ・デ・メディカーメンといい、やはり帝国を構成する領邦の一つ、ウェトルスリア地方のフィレニック共和国を支配する名家メディカーメン家の出身であり、同じ勢力拡大を目論むハビヒツブルク家に対するライバル心というものもある。  そうした背景が、カルロマグノの皇帝即位を阻むこの対抗馬擁立へと繋がったわけだ。
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