Die Kaiserwahl ~皇帝選挙~ 

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「しかし、メディカーメン家がフィレニックを追放された際、軍を出して帰り咲かせたのは他ならぬこのエルドラニアだろう? それを恩知らずにも……しかも、あのフランクルーゼとは……」  自分はまだエルドラニア王に即位する前の話であるが、そんな過去の貸し(・・)を持ち出して、その裏切り行為をカルロマグノは非難する。  選挙の邪魔をしたことばかりでなく、その対抗馬に選んだ人物がまた、彼を大いに呆れさせる。  預言皇の擁立したフランクルーゼ一世は、やはりかつての古代イスカンドリア帝国の旧領、ガリーラ地方に位置する隣国フランクル王国の現国王であり、長年、エルドラニアとフランクルは勢力争いを繰り広げているそれこそ宿敵同士なのである。  また、歳も6歳上と近く、サラブレッドのカルロマグノに対して自身は分家の出身であり、叔父に跡継ぎがいなかったことで辛くも王位継承者になれたというコンプレックスの顕わなのか? 領土争いはもちろんのこと、エルドラニアを真似て新天地の北の大陸へ探検家を派遣したりと、何かと対抗意識を燃やしてくる相手でもあった。 「それで、選王侯の中ではどれだけこちらへつきそうかな?」  額に手をついて頭を抱えると、枢軸卿としてその方面の事情に通じているスシロウデスにカルロマグノは尋ねる。 「まず、ボヘーミャン王とは姻戚関係にありますから、言うまでもなく我らの側でしょう」  そう。スシロウデスが答えた通り、カルロマグノの実弟フェルドナルドはボヘーミャン王ウラーシマー二世の娘アナンナと、また妹のメイアーはアナンナの弟のラジョス二世と結婚しており、ハビヒツブルク家との結びつきはそうとうに強いのだ。 「預言皇の意向に背くとはいえ、陛下の統べるボゴーニア公国領内ゆえ、トリエリア大司教のバードミェン殿もおそらくは大丈夫でしょう。コルン大司教のマクシフラン殿もハビヒツブルク家の出、こちらも確実です」  各々の抱える諸事情をあげながら、スシロウデスは七人の選王侯それぞれの意向を伝えてゆく。 「問題はここからです。レヌーズ宮中伯のルードローフ二世公、ザックシェン公のフレドリッチ三世公、ブランデーバーグ辺境伯のパードラシュ公は十中八九、あちら側に回るでしょう。不愉快なことにも彼らは〝ビーブリスト〟支持者。殊にザックシェン公など、その指導者たるマルティアン・ルザールのパトロンときた。〝レジティマム〟のエルドラニア王が皇帝となることを嫌っております」 「ハァ……反レジティマムなのに、そのレジティマムの頂点に立つ預言皇へ味方するなんてもう滅茶苦茶だ」  他人事(ひとごと)のように言うスシロウデスの言葉に、カルロマグノはますます頭を抱えて深い溜息を吐く。
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