Die Kaiserwahl ~皇帝選挙~ 

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「それが政治というものです。同じレジティマム支持国でも、フランクルーゼ王は自国の利益のためならばビーブリストどもでも支援しますからな。あくまでレジティマム支持のエルドラニアよりはまだましということでしょう」  だだでさえ、預言皇や選王侯の思惑が交錯する帝国選挙だが、状況をよりいっそう複雑にしている問題がある……それが〝ビーブリスト運動〟だ。  ビーブリスト(聖典派)――預言皇を頂点とした従来のプロフェシア教会を〝レジティマム(正統派)〟と称するのであるが、長い年月の間に腐敗しきったレジティマム教会に異を唱え、開祖である〝はじまりの預言者〟イェホシア・ガリールの教えの記された『聖典』へ立ち返ろうと訴える人々の総称である。  ザックシェン公国より始まったこの運動は北のガルマーナ地方を中心に瞬く間にエウロパ全土へと広がり、今やプロフェシア教会内だけでなく、各国間の外交や勢力争いにまで影響を及ぼす大問題となっている。  無論、預言皇もこのビーブリストには手を焼いているのだが、今回は自分にとってのもう一つの脅威、皇帝とハビヒツブルク家の力を弱める方を優先したらしい。 「最後の一人、マインエンズ大司教のアルプニスト殿は微妙なところです。アルムス山脈以北では預言皇の代理と称される、ガルマーナにおけるレジティマム最高位の聖職者なればこそ、けしてビーブリストには組しないでしょうが、彼がマイエンズ大司教になれたのは現預言皇のおかげ。なかなか頭の上がらない立場でございましょう。加えてブランデーバーグ辺境伯家の出身でもありますし……」 「マイエンズ大司教を除いても3対3か……危ういな。誰か切り崩せそうな者はいそうかい?」  スシロウデスから現状の説明を聞き終わると、尖った顎に手をやって少し考えた後、カルロマグノは再び彼に尋ねる。 「マイエンズ大司教は叙任の際に預言皇へ貢ぐため、フンガー家より莫大な借り入れをしております。その返済のために贖罪符を販売するなどそうとう苦労しているご様子。これを助けてやれば、こちら側へ回る可能性はかなり高いものかと」 「フンガー家か……うちでも今回の選挙資金借りてるし、なにかと融通が利く……よし。少し借金をまけてくれないか、当主のジャーコップに話してみよう」  フンガー家とは、ハビヒツブルク家の――つまり現在はカルロマグノの領有するチロロ伯領の銀山経営を担う大銀行家一族であり、そのために彼とも関係が深い。
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