Die Kaiserwahl ~皇帝選挙~ 

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「他の三人はかなり難しい。まあ、金品を贈るのは無論のこと、ブランデーバーグ辺境伯の場合は食道楽という話ゆえ、何か〝新天地〟でとれた珍味でもくれておくのは有効かもしれませぬが、やはり、陛下が皇帝になられた方がビーブリストのためになると思わせない限り、その態度を改めることはまずありますまい。無論、ビーブリストの味方をするなど断じてあってはならぬことですが……」 「つまり、レジティマムのエルドラニア王である私には不可能に近いということか……」  自身のコネで一人はなんとか取り込めそうであるが、シスロウデスの告げる厳しい現実に、カルロマグノはさらに表情を暗くする。 「あとは魔導書(グリモリオ)の力に頼るくらいしかありませんな……当然、向こうも使ってくるはず。そうとう腕の立つ者でなければ太刀打ちできませぬ。誰ぞよい魔法修士をご存知ですかな?」  それでも厳格な老僧は表情一つ変えず、今できる最善の道を若き王に進言する。  魔導書……それは神羅万象に宿り、この世界に影響を与えている悪魔(※精霊)を召喚して使役するための方法が書かれた魔術の書である。  プロフェシア教会やそれを国教とする国々は魔導書を禁書とし、その所持・使用を原則禁止しているが、魔導書を専門に研究する修道士〝魔法修士〟が存在するように、教会や各国王権の許可を得た者は例外的にそれが認められていた。  表向きは「邪悪な悪魔の書である」と禁書の理由を謳っているが、実際はその絶大な力を占有して権力を維持するための政策なのだ。  そして、人の心すらも操るこの魔導書の力は、王位や公位、高位聖職者の座を巡っての争いなどにも当然用いられ、言わずもがな、今回の帝国選挙においてもご多分に漏れずである。
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