小鳥遊さんは恋してる

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 《1−1》  それは、黄昏時の教室だった。  沈みかけの太陽が窓から教室を橙色に染め上げ、常闇との境界線を作り上げる。昼と夜の境目のこの時間に、俺は教室で帰り支度を行っていた。  すでに生徒はおらず、教室で居眠りをしてしまっていた俺だけが取り残されている。友人は俺を見捨てて帰ったようで、スマホには先に帰る旨を伝えるメッセージが一件だけ届いていた。  そんな友情があるのかどうか怪しい友人に怒りを覚えつつも、俺は眠ってしまった自分が悪いと黙々とカバンに持って帰る荷物を詰め込み。 「あれ?」    俺の体操服がなくなったことに気がついた。  今日は四限目に体育の授業があり、その後ロッカーにちゃんと仕舞ったと思ったのだけれど。ロッカーを覗くとその体操服がなくなっていることに気づいたのだ。 「盗まれたのか?でもなんで俺の体操服が?」  俺は寝起き状態の思考の鈍い頭で考えた。  新手のイジメか?でもそれなら体育の前に盗まれるはずだ。  もしこれがイケメンの体操服なら盗まれても、熱狂的なファンの女子が盗んでいったのだと納得がいく。  しかし今回盗まれたのは俺の体操服。  俺は主観的に見ても自分がイケメンだとは思えない。顔面偏差値で言えば中の上くらいだ。俺の体操服を欲しがる奴なんてこの世に存在するとは思えない。  だからこそ何故盗まれたのかが分からなかった。  俺は一人しかいない静かな教室の中を探すことにした。まずはロッカーから。教室の後ろには一人一つ支給されたロッカーがあり、俺もその自分のロッカーに体操服をねじ込んでいた。    もしかしたら他の人のロッカーに間違って入っているかもしれない。  俺は一つ一つ中を覗き、体操服がないか見ていく。 「ふむ……無いな……」  念のために他の教室のロッカーも見に行ってみよう。そう思って教室から出ようとした時。 ガタンッ。 「うぉっ!?」  掃除用ロッカーから音がした。だが、掃除用ロッカーには箒やちりとり、バケツしか入っていないはず。  中で箒が倒れたとか?それとも、ネズミとか虫とかが紛れ込んで入ってしまったとか?  俺はあり得る可能性を考えながら、恐る恐るロッカーの扉を開けた。  ロッカーの中には。 「はぁっ……はぁ……」 俺の体操服に顔を埋めて深呼吸を繰り返している美少女、小鳥遊楓がいた。 62c65b0c-bfae-48e9-bdda-458ad57eb22c
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