3/3

1/1
前へ
/3ページ
次へ

3/3

 そんな姉妹のやり取りを、屋敷の最上階から、二人の母親が見つめていた。 (あの子たち、どうしてケーキを食べようとしないの?)  テラスに居る二人の声までは聞こえない。  だが身振りなどから、どうやらどちらのケーキを食べるかで揉めているだろうことだけは分かる。 (早く食べればいいのに……どうせ、どちらを食べても同じなのだから)  母親は、二人が食べるであろうケーキに毒を仕込んでいたのだ。  毒を盛られ、倒れる様子を早く確認したいのに。 (どちらを取っても何も変わらないというのに……まったく、本当に出来の悪い娘を持ったものね)  不毛な、しかしこれが今生での最後になるだろう取り合いの結末を、母親はただ静観していた。        終わり  
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加