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どのくらいの時間が過ぎたであろう。
高揚する頬を夜風で冷ましながら、薄明かりの時計塔に座り目抜き通りを見下ろす。
街はもうこれ以上彩ることができないくらい色が重ねられていた。
「……」
その影でこのカーニバルを避けるように真っ白な部屋がこちらを見つめていた。
蒼い炎がわたしを心配そうに見上げるので首を横に振りそっと撫でる。
時計塔の風見鶏がからからと回り、背後を差す。もう少しで朝の星がやってくるのだと教えてくれた。
朝の星はとても生真面目だから、この有様を見たらきっと怒るに違いない。そうなる前にお帰りなさいと促される。
今一度街を見下ろす。
たくさんの色は徐々に明るくなる空が塗り替えてゆく。
名残惜しくて風見鶏に寄りかかるとひんやりと冷たかった。
――大丈夫。また会えるよ。
鈍色の体に耳を押し当てると、声のような音のようなものが聞こえた。
見上げると風見鶏はわたしが持っている傘の生地になっている花を嘴でつついた。
わたしは傘の柄をぎゅっと握り、真っ白な部屋を目指して屋根を蹴った。
「――…」
ゆっくりとまぶたを開けると真っ白な天井が見えた。
朝の光と鳥の鳴き声に顔を横に向ければ、窓の外には真っ青な空に綿菓子のような雲が一つ浮かんでいる。
「……!」
いつの間に挿してあったのか窓辺のサイドテーブルには真っ白なカラーの花が一本、すっと背を伸ばしてカラフルな色の花瓶に入っている。花の先はほんの少し七色に染まっていた。
わたしは思わず微笑んだ。
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