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「は?兄貴を?なんで?」
高校1年の春、やっと高校生活に慣れ始めた頃。
気になっていた同じクラスの女の子から、兄貴を紹介してほしいとお願された。
「咲斗のお兄さん、すごくタイプなんだよね」
……。
兄貴は同じ高校に通う3年。
どこかで見かけて、誰かに俺の兄だと聞いたんだろう。
「ダメかな、それとも彼女とかいる?」
「いや、いないと思うけど。
まぁ聞いてみるよ」
そう言うと、彼女の顔が見る見るうちにキラキラと輝きだした。
「ほんと!?ありがとう!」
なんだこれ。
何でよりによって兄貴なんだよ。
家に帰って渋々兄貴に聞いてみた。
どうせ兄貴のことだし、俺の同級生なんて興味ないと思ってたのに。
「いいよ」
だって。
まじやってらんねー。
何で自分の気になっている女の子を、兄貴なんかに紹介しなくちゃなんねーんだよ。
とか思いつつ、好きな女の子の頼みを断る事もできない俺も俺だけど。
翌日、そのことを葉乃に伝えると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
それはそれは満面の笑みで。
その笑顔が兄貴のために作られた笑顔だと思うと、すげーむかつく。
めちゃくちゃカワイイんだよな。
どうして俺へ向けた笑顔じゃなんだろう。
*
兄貴を紹介して1週間程が経った。
「ねーねー咲斗。
今度の土曜日、冬夜さんと会うことになった!」
「そうなんだ?」
いちいち報告なんてしてくんなし。
しかも、もう名前で呼んでるし。
距離の詰め方どうなってんだよ。
最近は、兄貴のことで葉乃と話すことが多くなった。
嬉しいのか悲しいのか、よくわかんねー。
「冬夜さん、どんな洋服が好みかな?」
「そんなの知らない」
「なんか咲斗、最近冷たくない?」
「んなことないよ。
気になるなら兄貴に直接聞けば?」
なんでもかんでも俺に相談しないでほしい。
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