その笑顔、俺にちょうだい。

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次の日の学校。 いつもだったら兄貴のことで話しかけてきていた葉乃は、その日から一切俺に話しかけなくなった。 俺が言ったことだ、仕方ない。 もう葉乃の口から、兄貴のことなんて聞きたくないんだ。 これでよかったんだ。 って、何回も何回も頭の中で繰り返した。 * 葉乃と全然喋らなくなっって1カ月。 学校に行く直前に、兄貴から一番聞きたくない言葉を聞いた。 「俺、葉乃ちゃんと付き合うことになったわ」 「あっそう」 1カ月もたったのに、なんでこんなにもショックを受けているんだろう。 もう、頭ではふっきているつもりだったのに。 そのまま学校を休んでしまいそうだったけど、何とか登校できた自分を褒めたい。 靴を履き替えていると、葉乃が俺の目の前に現われた。 いつもだったら目すら合うこともないのに、今日に限って最悪。 「よう、兄貴と付き合うことになったんだって? よかったじゃん」 約1カ月ぶりに葉乃に喋りかける。 俺は葉乃の反応が怖くて、葉乃の返事を聞く前に教室に向かおうとした。 「あのっ…」 そんな俺を引き止める葉乃。 「なに?」 「咲斗とちゃんと話がしたくて」 今更俺と何を話そうって言うんだ? 兄貴とののろけ話でも聞かされんの? 勘弁してくれよ。 朝は誰も通らない廊下で、 「お兄さんとは付き合ってない…」 葉乃は意味の分からないことを言った。 「は?」 「昨日冬夜さんに言われたの、付き合いたいって。 でも断っちゃった」 「なんで…?」 意味が分からない。 兄貴は付き合うことになったって言ってたよ。 「兄貴のこと好きなんじゃねーの?」 俺がどんな想いでお前を兄貴に紹介したか分かってる? 断るぐらいならはじめっから… 「あれから…。 咲斗に関わらないでって言われてから、もうずっと咲斗のこと考えてる。 ずっと咲斗が頭から離れなくなっちゃったの…」 「なんだよそれ」 まじで意味分かんないんだけど。 俺が葉乃を諦めようと、どんなに苦しんだと思ってんだよ。 「俺もずっと葉乃のこと考えてた」 「え?」 「ずっと、兄貴のことで一喜一憂してる葉乃を見てるのが辛かった」 「そうだったんだ…。 私、何も知らなくて本当にごめん」 「そう思うなら、俺と付き合って」 俺は軽い冗談のつもりだった。 「いいよ」 葉乃は俺の前で久しぶりに笑った。 「やば」 「え?」 急展開すぎる。 今日頑張って学校来てよかった、とか。 後で兄貴を問い詰めてやる、とか。 色々思考は回るけど。 「俺でいいの?」 「咲斗がいいの!」 葉乃の笑顔に全部もってかれた。 .End
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