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無意識ト幻覚ザイ
イチョウの葉が黄色に染まりつつある午後の公園のベンチで、私はサンドウィッチをつまみながら文庫本に視線を落としていた。
まだまだ暑い今日、新発売だからとすすめられたエナジードリンクも飲んでみる。
水滴がしたたる缶はひんやりとしていて心地よい。だが、初めて知るそのドリンクの味は想像をはるか斜めに超えていた。
口中いっぱいに甘ったるさが広がり、私の目はすっかり覚めたようだった。
それからまた本に視線を戻すが、なんとなく集中が切れてしまった。顔を上げ正面を向くと、私はふぅと息を漏らす。
吹いてきた風が男の白髪のまじり始めた前髪を優しく揺らした。
その生暖かさを感じながら私はそっと目を閉じる。
「ねぇ、パパー! みてみて!!」
「おぉ、上手に描けているなぁ! ミユキ、パパにそっくりだ!」
隣のベンチに座る子供とその父親の声が楽しげに聞こえてくる。
「おい! お前!! 人の娘になにしてるんだ!! 俺がこの子の父親なんだぞ!! お前の顔に似ているわけがないだろ!!」
「何を言っているんだ!! お前こそ誰なんだ!? 急に現れて!! 俺がこの子の父親に決まってるだろ!! ミユキは俺の子だ!! 警察を呼ぶぞ!!」
ふいにもう一人、男性の声が叫びだした。
その声に、最初の父親の声が怒鳴り返している。
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