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気が付けば、カーテンレールに囲まれ、限られた天井が見えていた。
体は金縛りにあったように動かない。目を必死に開け辺りを確かめると、白いカーテンがひかれたベッドの上で、私は横になっているようだった。
「うぅ……うぅ……」
私は一生懸命、声を上げようとする。
すると、シャッと短く音がしてカーテンが開き、若い女性の看護師が入ってきた。
「カネコさん! カネコタカオさん!! 目が覚めましたか!? 今、先生呼びますね。あとカナも!!」
そう言って、看護師はせわしなく出て行く。
はて、どうして彼女は私の娘、カナを知っているのだろうか。
私は時間の感覚がまるでわからなかったが、その後、医師と看護師、娘のカナがやってきて、なにやらいろいろ話をしていたようだった。
一段落ついたのか、医師も看護師も出て行き、娘のカナだけがこの場に残る。
「お父さん、よかった……まだしばらくね、体は自由に動かせないかもしれないけど。何日かすれば、また元の生活が送れるそうよ。びっくりしちゃったよ、本当に……」
カナは泣いている。声でわかる。
「公園のベンチでね、泡を吹きながら倒れているところを偶然、通りかかったミユキが助けてくれたのよ。覚えてる? 私の学生時代の友人で、確か、一度か二度くらいはお父さんも会ったことがあるはず……ミユキが看護師で本当によかった! それにしても、お父さん……いったい何を飲んだの? お医者さんは何かの毒物か、薬を飲んだんじゃないかっておっしゃってたわ」
毒物か、薬……はっきりしない頭で私は思い出していた。
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