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運命でありますように
僕は次の日、野球部の練習が終わった後にそのまま若菜の病院へ向かった。
扉を開けると、病室のベッドで横になる若菜の姿があった。
僕は起こさない様にそっと若菜のベッドの横にあるイスに座った。
若菜の眠っている顔を見て、僕が出会った頃よりも幼いんだなと実感した。
「・・・・君は・・・?」
「ごめん、起こしちゃったね。」
「やだ、こんな所見られたくなかったのに。」
「ごめんね。でもどうしても心配で。それと若菜とどうしても話をしたくて。」
「・・・私の病名聞いたでしょ?」
「あぁ、白血病・・・なんだってね。」
「そう。治るかどうかもよくわからない状態なんだって。もっと早くちゃんと見てもらえば良かったのにね。」
「そう・・・だね。」
「ねぇ、そういえばまだ名前聞いてなかったよ。」
「あ・・・えっと、隆太。」
「隆太は、何歳なの?」
僕は笑顔で答えた。
「若菜の3つ下だよ。」
「どうして私の歳を?」
「若菜の事なら・・・知っているよ。前にも話ただろ?」
「そうね。未だに信じられないけど。良かったら少し、その話をして?ずっと病室にいて暇だったんだ。」
「・・・わかった。そうだね。僕と若菜が出会ったのは・・・。」
僕は若菜に話をした。
今の若菜は疑う様な顔をする事なく、僕の話を聞いてくれていた。
「そして、僕と若菜の間には女の子が産まれたんだ。僕は優菜って名前を付けた。若菜も気に入ってくれててさ。産まれたばかりの優菜を抱きながら泣いている僕の姿を見て、若菜も笑いながら一緒に涙流してた。そして僕達は・・・・。」
僕は思い出を語るかの様に話していた。
そしてたくさんの涙を流していた。
「ごめん、こんなはずじゃ・・・。」
僕は笑顔を作りながら涙を拭った。
若菜を見ると、若菜も一緒に泣いていた。
「どうしたんだよ?何で若菜も泣いてるんだよ?」
「ううん、ごめんね。何でだろう?私が経験した訳じゃないのに、今の話を聞いていて幸せだったんだなって思ったの。その世界での私はちゃんと元気で、可愛い娘もいて、話を聞く限り本当に幸せだったんだろうなって。」
「そう・・・だね。若菜は本当によく笑ってた。」
「ねぇ、隆太は今でも私の事・・・好き?」
「大好きだよ。ずっと、ずっと愛してる。僕の未来には、若菜と優菜しかいないってそう思ってる。だから、若菜には元気になってもらわなきゃ困るんだ。」
「・・・そっか。ありがとうね。私も隆太の事もっと知りたいよ。いっぱい話し聞きたいな。」
「うん!毎日会いにくるよ。」
それから僕は本当に毎日若菜の所へ通った。
たくさんの話をした。
そして毎日通う毎に若菜は元気を無くしていった。
そして7月7日、僕は若菜にプロポーズをした。
全力の愛を若菜に告げた。
若菜は困った様に照れながら、小さく頷いてくれた。
そして7月8日午後8時、若菜は静かに息を引き取った。
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