もう一度君に会いたい

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もう一度君に会いたい

彩と別れ、僕は自然と若菜が住んでいる家の方向へと向かっていた。 その道中には懐かしい景色がたくさんあって、忘れていた若菜と過ごした日々を思い出していた。 若菜と歩いた道、どうかもう一度・・・。 だけど、前に若菜と会った時、若菜には違う男がいた。 これを知っていて僕は若菜に何て言えるだろうか。 そもそも今の若菜は僕の事を知らない。 こんな状態で、僕は若菜ともう一度一緒になれるのか? 突然僕はそんな不安に陥ってしまった。 気付けば僕は若菜の家に着いていたが、インターホンを押す勇気も無かった。 結局僕は何も出来ずその場を去ろうとした時だった。 「こんばんは。」 僕はゆっくりと振り返った。 「・・・管理人さん。」 「どうしたの?こんな時間に?。」 「いや、その・・・。」 遠くで花火の音が聞こえていた。 「良かったら、少し話さない?」 僕と管理人さんは、近くにあった公園のベンチに座った。 僕はとっさにあの日の事を聞いてみた。 「管理人さん・・・この前・・・運命の話をしていた時・・・未来の誰かが待っているって言ってましたよね?あれは、どういう事でしょ うか?」 「ごめんね。色々あって私からはうまく言えないの。けれど、本当に大切な事に気付いたあなたなら、きっとその答えはわかるはず。私は そう信じてる。」 「本当に大切な事?」 「そう。それは私から言う事でも、誰かから教えられる事でもないの。 あなた自身で気付く事が本当に大切な事なのよ。」 「管理人さん・・・。僕は・・・、僕の中に大事な人がいるんです。もう一度その人と一緒になれるなら、僕は何でもしたい。けれど、一体どうしたらその人と出会えるのかわからないんです。いきなりこんな話をして管理人さんには何を言っているかわからないと思いますけれど。」 「ううん、そんな事ないわ。すっごくわかる。私にはわかるわ。」 何故だろうか。一瞬管理人さんが少し泣いている様に見えた。 「隆太君聞いて。本当にその人が大切でもう一度一緒になりたいって思ってくれるなら、素直に貴方の思いを伝えて。きっとその思いを、相手の人も待っていてくれているわ。」 「管理人さん・・・。」 管理人さんの言葉は、何故かすごく胸に響いた。 全く知らない人に大丈夫なんて言われて安心出来る根拠なんてない。 だけれど、管理人さんの言葉だけは何故か信じる事が出来たんだ。 「管理人さん、ありがとうございます。本当に。僕、うまく伝えられないかもしれません。正直、突き返されるかもしれない。でも、今のままの気持ちで前には進めない気がする。だから・・・。だから、僕行ってきます!」 「・・・うん!頑張って!」 まるで自分の事の様に嬉しそうに応援してくれる管理人さんの顔には、やはり涙があった。 その涙が一体どんな理由なのかはわからない。 でもそんな事よりも、管理人さんが背中を押してくれた今なら不思議と若菜に思いを言える様な気がした。 今の若菜は僕の事は知らない。 そんな相手にいきなり言われたらビックリするだろう。 もしかしたら変人の扱いを受けるかもしれない。 でも、それでも僕は。 そしてまた若菜の家に着き、僕はゆっくりと若菜の家のインターホンを鳴らした。 (ピンポーン) 響き渡る音に、緊張が増し鼓動が早くなった。 「はーい、どちら様でしょうか?」 インターホン越しに声が聞こえた。 恐らくお母さんの声だろう。 「あの・・・僕・・・隆太と言います。あの・・・若菜さんはいますでしょうか?」 「若菜なら、今日は花火を見に行くって言ってまだ帰って来てないですけど?」 「・・・そう・・・ですか。わかりました。夜分遅くにすみません。」 そう言って僕は若菜の家をあとにした。 先程の管理人さんからもらった勇気が、少しずつ無くなっていた。 「今日は・・・もう帰ろう。」 そう呟いて僕はゆっくりと自分の家に向かって歩き出した。 10分程歩き交差点の信号で信号待ちをしている時だった。 ふと顔を上げると、そこには若菜が一人で立っていた。 僕は思わず叫んでしまった。 「若菜っ!!」 若菜は突然呼ばれた事に驚いた。 けれどその後僕を見て困った様な不思議そうな顔をしていた。 無理もない。 だって若菜は僕の事を知らないのだから。 (早く!早く信号変われ!) 僕は心の中でそう唱えた。 そして信号が変わると同時に僕は若菜のもとへ走っていった。 「・・・若菜。」 「あの・・・どちら様・・・ですか?」 「あっ・・・あの・・・えっと・・・僕、隆太っていいます。ずっと若菜さんと話をしたくて。」 「お気持ちはありがたいんですけど、私彼氏いますよ?」 「知ってます!・・・あ、いや、知ってました。それでもいいんです。あなたと少し話をさせてもらえませんか?ほんの少しだけでいいんです。」 「・・・少しだけなら。」 「あ、ありがとうございます。嬉しいです。それじゃ、あそこのベンチでどうですか?」 「はい、大丈夫です。」 僕と若菜はゆっくりと歩き、先程管理人さんと話をしていたベンチに二人腰かけた。 そして僕は若菜にゆっくりと話し始めた。
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