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幸せな家族
「龍太ー!早く起きなさーい。」
妻の若菜が、寝室の隣のリビングから俺を起こしてくれた。
僕たちは結婚して3年目になる。無事に子供も産まれ、もうすぐ1歳半になる。
「若菜おはよー。優菜もおはよー。」
「おはよー。優菜もパパにおはよーは?」
「キャハ!ワー、ウー」
優菜はまだ喋れないけれど、毎日笑顔で僕の心を癒してくれた。
仕事が大変でいつも遅くに帰ってきたりもするけれど、若菜はいつも起きて僕の帰りも待っていてくれる程、自分が家族に愛されていて、僕自身家族を愛しているんだと実感していた。
「今日も帰り遅くなりそう?」
「多分ね。今度の会議で使う資料作りをしなくちゃいけないし、部下の面倒も増えたからねー。」
「役職がついて偉くなったらもっと大変になってきたね。頑張ってね!」
「うん。頑張るよ。ありがとう。・・・もうそろそろ行く時間だ。」
「優菜ー!パパお仕事に行くってさー!」
狭い玄関で靴を履き、振り返るといつも若菜と優菜が見送りをしてくれる。
「それじゃ!行ってきます!」
「行ってらっしゃーい!。」
玄関の扉が閉まる最後の最後まで、若菜と優菜の笑顔見ながら手を振り、車に乗って会社へと向かった。
こんな日常を送り、僕は全然幸せに思える。
だけど、たまにふと考えてしまう。
もしも記憶はこのままで、もう一度人生をやり直せたら、もっと貯金もして、もっと勉強もして、もっと野球の練習もして、そしたら今頃は有名人になって、若菜と優菜をもっと幸せにしてあげられるかもしれない。
こんなあり得ない様な事を僕は考えてしまうんだ。
僕の会社は中小企業の中でも大きい方の会社ではあるけれど、お給与はさほど高くはない。
それでも先程言った様に、帰りが遅くなったりする事や、休日出勤も多くある為、なかなか家族でゆっくりと過ごす事も出来ないし、欲しいものを何でも買ってあげられる程の貯えもない。
そんな自分に時々苛立ちを覚えたりする事もある。
「何か良い事ないかなー。突然お金が転がってくる様な事・・・。そんな事あるわけないよなー。人生やり直したい。」
そう呟いたその時、
(ププーーー!キーーーー!・・・ドン!!)
僕は気を失い、目の前が真っ暗になった。
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