さようなら

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さようなら

あれから僕と彩は付き合う事になった。 学校から帰る時はいつも一緒だった。 学校帰りの途中にはゲームセンターや映画、デートをたくさんした。 あの時彩を好きだった。 けれど何もしないまま終わった青春を、今はこれでもかというくらい堪能していた。 野球の試合の時も何度も応援に来てくれて、学生時代殆どを一人で過ごす様だった僕の人生が、大きく変わっていた。 時は流れて中学三年生野球部最後の夏の大会は、全国まで行き優勝をした。 そのおかげで多くの高校からのオファーを受け、私立の甲子園常連校を選択した。 たくさんの声援を受けたあの瞬間は、今までに味わった事の無い感動的瞬間に僕は満足していた。 彩と出会い、野球も活躍し僕の人生は最高だった。 これが僕の本当の人生なんだとそう思っていた。 中学三年生の冬。 僕は初めて恋人とクリスマスを過ごした。 朝からショッピングをし、二人で手を繋ぎながらイルミネーションの世界を歩いた。 色とりどりに輝く世界の中、一瞬時が止まった。 (わ・・・・若・・・・菜・・・・。) 手を繋いで歩く僕と彩の隣を、手を繋いで歩く若菜と彼氏の姿だった。 「隆太?どうしたの?」 僕達はお互いを知らない。 あの時とは違う道を歩いている。 大好きだったあの笑顔で、知らない誰かと歩いている。 そんな事は当たり前の話だった。 だから僕は 「ううん、何でもないよ。行こう・・・。」 僕と若菜の距離がゆっくりと遠ざかっていった。  胸が痛かった。 涙が溢れそうだった。 けれど、僕達は互いに違う道を歩き、そして違う人を好きになる。 僕と君は出会わない。君はもう僕を知る事はない。 (ごめん・・・そして・・・さようなら。)
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