8人が本棚に入れています
本棚に追加
さようなら
あれから僕と彩は付き合う事になった。
学校から帰る時はいつも一緒だった。
学校帰りの途中にはゲームセンターや映画、デートをたくさんした。
あの時彩を好きだった。
けれど何もしないまま終わった青春を、今はこれでもかというくらい堪能していた。
野球の試合の時も何度も応援に来てくれて、学生時代殆どを一人で過ごす様だった僕の人生が、大きく変わっていた。
時は流れて中学三年生野球部最後の夏の大会は、全国まで行き優勝をした。
そのおかげで多くの高校からのオファーを受け、私立の甲子園常連校を選択した。
たくさんの声援を受けたあの瞬間は、今までに味わった事の無い感動的瞬間に僕は満足していた。
彩と出会い、野球も活躍し僕の人生は最高だった。
これが僕の本当の人生なんだとそう思っていた。
中学三年生の冬。
僕は初めて恋人とクリスマスを過ごした。
朝からショッピングをし、二人で手を繋ぎながらイルミネーションの世界を歩いた。
色とりどりに輝く世界の中、一瞬時が止まった。
(わ・・・・若・・・・菜・・・・。)
手を繋いで歩く僕と彩の隣を、手を繋いで歩く若菜と彼氏の姿だった。
「隆太?どうしたの?」
僕達はお互いを知らない。
あの時とは違う道を歩いている。
大好きだったあの笑顔で、知らない誰かと歩いている。
そんな事は当たり前の話だった。
だから僕は
「ううん、何でもないよ。行こう・・・。」
僕と若菜の距離がゆっくりと遠ざかっていった。
胸が痛かった。
涙が溢れそうだった。
けれど、僕達は互いに違う道を歩き、そして違う人を好きになる。
僕と君は出会わない。君はもう僕を知る事はない。
(ごめん・・・そして・・・さようなら。)
最初のコメントを投稿しよう!