運命

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運命

中学を卒業し、僕は甲子園常連校に行き、彩も同じ高校を選んだ。 高校に入ると野球のレベルが数倍も高くなり、ひたすら練習に打ち込んだ。 その事で彩と一緒にいる時間もかなり少なくなった。 話をするのは学校の休み時間、それくらいだった。 「隆太・・・最近あまり話せないね・・・。」 「ごめん、やっぱり高校に入ったら中学の時の様にはうまくいく事ばかりじゃないからさ。人一倍練習しないと。」 「そうだよね。隆太が甲子園で活躍する所、早く見てみたいなー。」 「絶対甲子園に行くよ。俺が投げて活躍する。それが俺の夢なんだ。」 「そうだね。中学の時からずっと言ってたもんね。ずっと応援してるよ!あっ!そろそろ休み時間終わっちゃう!私先にいくね。またね。」 そう言って彩は自分の教室まで戻っていった。 「そろそろ俺も戻ろう。」 「君は・・・・運命って信じる?」 「・・・・・?」 どこからか声が聞こえた。 誰もいないと思っていた。 僕は図書館の中を走り周りその声の主を探した。 そしてそこにいたのは、図書室の管理人だった。 年は40歳位だろうか。メガネを掛けた女性だった。 「運命・・・ですか?」 「そう、運命。誰かと出会い、誰かと一緒になる。それがどんな人生でも、例え違う人生を歩んだとしても必ずその人のもとへ辿り着くの。」 「僕は・・・信じないです。」 「あら?どうして?」 「だって、全く違う人生を歩んだら、その人と会う事すらなくなる。」 現に僕がその通りだった。 一度は若菜と優菜の楽しい人生を歩んでいた。  けれど今は出会う事すらなくなったからだ。 「本当にそうなのかしらね。きっと違う人生を歩んでも、違った形でその人と必ず出会う。私はそう思っているわ。」 「・・・・。授業始まるんで。失礼します。」 「ねぇ・・・。隆太君。」 僕は管理人の方を振り返った。 「未来の誰かはきっと・・・。あなたの事を待っているわ。」 管理人が何を言っているのかさっぱり理解出来なかった。 けどこれだけは分かっている。 僕はもう若菜と出会わない。 そして優菜も産まれない。彩とずっとこのまま・・・。 管理人に軽く会釈をし、何も言わず僕は図書室を出た。
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