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――この仕事を続けるなら、セキュリティのしっかりしているマンションの方が子育てには都合がいいのかもしれない。
「マンションなら将来、お子さんが成長して手狭になったときに賃貸することも可能ですよ。賃貸に出せばその賃料でマンションのローンを返済することは十分可能です」
「そうですよね。賃料で返済をまかなえれば、新居のローンにダメージはあまりない」
「そうです。さすが先生ですね」
にこりと笑った営業マンは真衣に体を寄せ、耳元で囁く。
「実はいい物件知ってるんですよ。でも会社のルールでお客様ファーストが決まってるんで、僕では買えないんです。結婚後の新居で買いましょうよ。もちろん、結婚後は僕が支払いをしますから」
元気な体育会系営業マンから一転、艶っぽい声で囁かれぞくりとする。横目で彼を見れば真衣の顔の横に顔を寄せたまま、秘密を共有するような笑みを浮かべられる。
近くで見ると掘りの深い整った顔立ちだ。それに艶のある声が加わったらノックアウトされる。この艶のある声を自分だけが聞いていたいと思ってしまう。
「一緒に抜け出しませんか。もうカップリングが決まったってことで」
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