平凡だった日々

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平凡だった日々

 私の名前は、マサエ。私の毎日は、好きな仕事をしている楽しさに満ちあふれた日々だった。私は、洋服を修理する仕事をしている。女性ばかりの会社で小さな会社だけど、一流の洋服を修理する技術に関して国内に数少ないリフォーム会社として、ここで働く人たちは、皆高いプライドを持って仕事しているように見えた。振る舞い一つにしても上品に、接客はプロ並みに、社内のすべてがいちいちおしゃれでスタイリッシュ、いつも整っていて掃除されていて、清潔感にあふれている。社外にはそんな雰囲気をアピールしたいのが見て取れる感じがした。そんな中に私も飛び込んだのだけれど。 この会社は現役デザイナーだった社長を筆頭に、すべてを取り仕切る副社長、修理縫製するものが2人、そして、準修理者が2人、そして新たに加わったアシスタントとして私の、合計たった7人の小さなリフォーム会社だ。一からの製作を依頼されることもあり、内容は多岐にわたる。洋服の修理には、まず部分的に糸をほどかなくてはいけない。一度縫ったものをほどくと言うこの作業は、一番大変なところだ。ほどくコツというものもあるが、一針一針、ほどいていく。そして修正するサイズとデザインに生地をカットしていくが、縫い代分を残しておくことを忘れないように気をつけなければならない。洋服がサイズやデザインを修正されて新しく生まれ変わっていく姿は、とても楽しい。何より、衣類が大好きだった私は、毎日衣類に触れることができるこの仕事が、本当に楽しかった。 私はアシスタントとして勤続して、もう10年になっていた。入社したばかりの10年前、それはわくわくに満ちた、平凡な日々だった。何も知らなくて良いと言う条件で、この会社に採用された。この会社の採用時の重要条件は、「この業界に未経験であること」だった。それが結え、私は採用されたのだ。洋服に関わることへの憧れのあった私にとっては、最高に嬉しい出来事だった。何も知らない私は、リフォームの仕事を日々覚えていった。難しいこともあり失敗もするけれど、楽しくて仕方なかった。社長や副社長、先輩たちの振る舞いや仕事ぶりを見て、上品さや知的さを感じたような気がしたし、私も近づけるように頑張ろうと、精一杯自分を奮い立たせたものだ。本当の上品さと、見せかけの上品さの違いを知るまでは、なんと平凡な日々だっただろう。
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