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うんぬんかんぬんすっとばして食べちゃおう
今日は厄日だ。
道に迷ってよそ見していたとはいえ、まさかこんなことになるなんて。
運悪くガタイのいい金髪の派手な男にぶつかった俺は、そのまま細い路地に引っ張り込まれ金を要求されている。俺の容姿が目が隠れるような前髪をした黒髪で、記憶に残らないような一般的な服装だったから余計絡みやすかったのだろう。もう既に容赦なく数発腹や顔面に食らっていて、口の中は気持ち悪い鉄の味。さらに反動で地面についた尻が痛い。
しかも運悪く手持ちがなく、殴った後も目の前の奴らは解放してくれない。
どうやって逃げようか、と思考を巡らせていると、男の連れらしき奴が「アニキ、こいつ顔がいいから売れるんじゃね?」と言い出した。
その言葉の意味は、それほど考えなくてもわかる。
迷子中に目の端に入った『男色』と書かれたピンクがかったホテルの看板が脳裏を過った。
「ああ、そりゃいいな。よし、おら立て」
にやつきながら無理矢理立たされ前髪を強引にかきあげられる。
「綺麗な顔つきだ。こりゃ高くいくぞ。顔殴ったのはまずかったが……まぁ、イケんだろ」
舌舐り混じりの台詞に背筋がぞわりと走る。
危険を感じた俺が逃げようともがいたその時だった。
「何してんだい? おたくら」
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