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あぜ道をまっすぐ歩いて帰る。だだっ広い田んぼでは、蛙がゲコゲコゲコゲコ鳴いている。
「あんなー、家にあるアイスの残りはわたしのだからなー」
「なんで?あたし、少し食べただけなのに」
「あんたはいっつもすぐ食べるよなー。だから、お姉ちゃんはいっつも食べれない」
「そんなら、早く食べればいいし。ダイエットとか何とか言わないで」
痩せてるあんたにゃわからんのよ、好きなときに好きなもの好きなだけ食べて…と、姉はランドセルを担ぎ直して言う。
「何食べて、そんなに大きくなるん?お姉ちゃん、男子よりめっちゃデカいし」
「人が気にしてること、ズカズカ言うな。あんたも二年後には、こうなるからな」
あたしはならないよ、食べても運動で解消してるから…と、妹は腕を振り、走るような仕草を見せた。
後ろから来たトラクターのおじさんに仲良く挨拶をする。いつも元気だねぇ、とおじさんは笑顔で言って通りすぎる。蛙の鳴き声は、止まったり鳴いたり、忙しない。
「今日はお姉ちゃん、アイス食べたい気分なの。譲ってちょうだい」
妹は考える。そして、答えた。
「じゃあ、次のアイスは、あたしが全部食べていい?そんなら、いいよ」
「全部って!みんなで食べるアイスでしょ。あんたって子は…」
呆れて物も言えない、と姉は嘆息する。
食べればいい、食べて太るなり、お腹壊すなりすればいい、姉がそう言うと、
「太らんし、腹も壊さない。そういう星のもとに生まれてる」と、妹は鼻高々宣言する。
「…意味わからん」と、姉は呆れている。
後ろから車が来た。狭い道の端に寄ろうとすると、妹が突然大きな声を出した。
「おばあちゃん!」
車に走り寄り、前を塞ぐ。クラクションが短く二回鳴った。
「おばあちゃん、どした?」
妹が聞く。
「ふたりの顔見たくて、来たのさ。アイスも買ってきたよぉ」
やったー、あたしのアイスと妹は言い、あんたのじゃないと姉は言う。
「暑いから、中に乗れ。おばあちゃんの車で家までドライブしよう」
車の中は冷房が効いていて、外の暑さが嘘のようだった。蛙の鳴き声が、車の中にも入ってくる。ゲコゲコ…ゲコゲコ。
家に着いた姉妹は、二個ずつアイスを食べた。家に残っていたモナカのアイスは、取り合うことなく、割って食べた。
その夜、姉妹は揃って腹を下した。
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