愛と探偵、パラキート

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小松は大のヒーロ好きだったが、目の前の鳥居と名乗る男は普通の人間に見えた。 「秘密だったら言わなくてもいいですから。空木さん、自転車降りて。鳥居さんに渡してください」 はあ!? と文句を言いながら空木は降りた。 こっちはチャンスを逃したくねーんだよ。窃盗団を捕まえないと今回の謝礼金が出ない。 空木はとにかく腹が減っていた。ラーメン屋に行けるほどの金も持っていなかった。 「敵はブラック・エッグという宝物を持っています。そのエッグが白に変わるとき、願いが叶うと言われています」 鳥居は人差し指を立てながら真剣な眼差しで語った。 変な人か、本物のヒーローか。 小松はとりあえず話を聞くことにする。 「昨夜、ブラック・エッグが盗まれ、スーパーヒーローである僕が緊急出動することになりました」 これも、本当は秘密事項なんですけどね。鳥居は諦めた顔で言った。自分が嘘をつけない性格だということを自覚していた。 「スーパーヒーローも自転車に乗るんですか?」 ヒーローと言えば変身じゃないのかな。 小松はテレビで見たヒーローを思い出す。大好きだったなあ。変身ポーズの真似は今でもできる。彼女の前でやったら笑ってくれたっけ。 あ……と思ったが、すでに小松の胸は痛みを感じた。ズキズキ張り裂けそうなくらいの大きい痛み。 「何がブラック・エッグだよ。こっちはな、生活がかかってんだよ!」 「でも僕は世界を背負っているんです!」
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