支え 導き 守られる

田中氏の言葉に、私は少し考え込む。

私はもともと、夫の不倫を暴きたいわけではなかった。
今更多少の不貞に目くじらを立てる歳でもないし、多少の「遊び」のお陰で家庭が円満に回るのであれば、正直それで満足だった。

今回探偵への依頼にまで踏み切ったのは、香菜子の得体の知れなさと胸に巣食う漠然とした不安のためだ。

「いえ、今回は結構です。小島香菜子の正体と夫との関係がわかれば十分です」

世の中にはきっと、知らないままの方がいいこともたくさんある。
もちろん、家族に悪影響をもたらさないという条件が付くけれど。

私は「よろしくお願いします」と頭を下げ、事務所を後にした。