25人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「小島香菜子の方が、ご主人に対して熱烈なアプローチをかけていたようです。今のところ成功していないようですが」
なるほど、それで「まだ」なのか。いつ夫が陥落するかわからないから。
「ただ、話はそれで終わらないんです」
田中氏に亮と呼ばれていた彼が、隣から口を挟む。
「ご主人は今、社内のある人物と課長職をめぐって出世争いをしていてですね」
「出世争い、ですか……」
思わぬ方向に話が飛んで、私は少々面食らった。
「その相手──山添隆司という男ですが──彼を推す一派があの手この手でご主人を邪魔しようとしているようなんです。小島の接近はその一環でした」
最初のコメントを投稿しよう!