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「え、ええ?」
思わずおかしな声を上げてしまった。
彼らの話を整理すると、どうやら夫は敵対勢力に失脚を狙われていて、香菜子はそのためのハニートラップとして遣わされたということらしい。
「職場の人たちの話では、小島はかなり大胆にアプローチをしかけていたらしいんですが、ご主人は相手にしなかったそうです」
「……!」
なんと。一瞬の驚きのあと、比較にならない申し訳なさが襲ってきた。
夫は夫で、「取り合い」に巻き込まれていたのだ。私が知らなかっただけで。
「それで……私をわざわざ訪ねてきて自分を不倫相手だと思わせる、なんていう強硬手段に出たってことなんですね」
あまりになびかない夫に対ししびれを切らし、外堀から埋めようと考えたのだ。
もし私が安易に夫を糾弾していたらと思うと背筋が冷える。
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