27人が本棚に入れています
本棚に追加
「──何を……」
驚きのあまり、続きは声にならなかった。
けれど目の前の女性──小島香菜子と名乗った──は気にする様子もなく繰り返す。
「ですから、行成さんと離婚してくださいと言ってるんです」
行成というのは夫の名前だ。
つまり私は今、初対面の女性に夫との離婚を迫られている。
彼女は隙なく微笑んではいるものの、そのまなざしは真剣だった。
どうやら冗談ではないらしい。もちろん、冗談で言うようなことではないと思うけれど。
「あなた……いくつなの」
他に言わなければならないことはいくらでもあったはずなのに、思わずそんな言葉が口をついて出てしまった。というのも、だ。
「今年で25になりました」
最初のコメントを投稿しよう!