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「夫とあなたの……関係は?」
すぐにでも店を飛び出したい衝動を抑えて訊いてみる。
すると香菜子は表情を変えることなく「上司と部下です」と答えた。
案外普通の答えだ──いや、堂々と「愛人です!」なんて宣言されるのも嫌だけれど。
「じゃあ、どうしてあなたは上司本人ではなく、上司の妻に離婚を迫っているのかしら」
すると香菜子はにっこりと微笑んだ。
「それが私の役目だからです。行成さんを解放してあげることが」
私は思わず、彼女を穴が開くほどに見つめてしまった。
解放?
まるで私が夫を縛り付けているかのような言い方だ。
それとも夫は不倫相手である彼女に、ことあるごとにそうこぼしているのだろうか。
だから彼女は、愛する人を救うべく私に直談判しに来たのだろうか。
……なんだかめまいがしてきた。
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