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次の週、彼は歩いて塾に来た。
「雨じゃ自転車乗れないからね」
彼は相変わらず素敵な笑顔で私に言った。私は傘を忘れたと言った。本当は持ってるけど。折り畳めるやつ。
「じゃあ、途中まで一緒に入ろうか」
彼の左手に持った傘は、私達二人を雨から守ってくれた。今日ばかりは雨に感謝しなくちゃな。彼を自転車から取り戻し、相合い傘までプレゼントしてくれるなんて。
「来週は晴れるといいね」
彼は笑顔でそう言った。そうですね、って私は言った。私は初めて彼に嘘をついた。
止まないで、雨
私は心の中でそう呟いた。
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