止まないで、雨

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 彼は最近自転車を買った。ただの自転車じゃなくて、ロードバイクって呼ばれてる、なんかカッコいい自転車を買った。 「塾まで家が遠いからね」  彼はそう言って笑いながら、自慢の愛車を撫でた。私は彼の自転車を羨ましく思った。私だってあなたに撫でられたい。可愛がられたい。勿論そんなこと言えないけどね。  彼は私と帰らなくなった。自転車で帰るから。私は1人歩いて夜道を帰ることになった。辛かった。このときのために私は塾にも通い続けた。辛い一日も乗り越えられた。なのに、それなのに。彼の気まぐれで買った自転車にそのひとときを奪われたような気がして。私は悔しかった。悲しかった。私は泣きながら夜道を歩いた。雨が降り始めた。そういえば、今日から梅雨入りだっけな。今日降りだした雨は、来週まで続くらしい。嫌になるなぁ。私は濡れながら帰った。その雨は、私の涙を隠してくれた。
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