第一章/29

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第一章/29

──それに。  なにひとつスキルを持たぬ真昼とは違い、真朝には「予言(オラクル)」という貴重な能力が備わっているのだった。少し先の未来を確実に言い当てるこの力はなにかと役に立つが、保有者(ほゆうしゃ)がとても少ない。  なので、どこに行ってもなにをしても、真朝は一目置かれる存在であった。体が弱いために保健室に通いがちであるが、それでも、彼を悪く言う者はほとんどいなかった。双子の弟は、常に落ちこぼれ扱いされているのに、だ。  消毒液の香りが立ち込める空間を出、廊下を歩く。通りすがりの女子連中が真朝を見るなり、 「あ、真朝くんだ。今日もかわいいなあ」 と呟いた。 「あーあ、いいよな、兄貴は」  嘆息(たんそく)を派手にまじえつつ、大声でぼやく。すると、静かな足取りで隣を歩いていた真朝が、 「なにが?」 と、尋ねてきた。その口調は、早春の陽光(ようこう)のように清く、穏やかだ。
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