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序章/4
嫌な予感に急かされるまま、空を振り仰いだ。いつしか、ただならぬ動悸が、少年の胸を強く圧していた。こころなしか、喉を下る唾液の量が増えたような気がする。
闇に包まれた無音の空間に、金色の雪が降っているのが見えた。さらに目線を上げたところ、
「……、」
彼の目に、信じがたい光景が映った。
棺だ。
巨大な棺が、光る雪を降らす夜空にどっしりと横たわっている。漆黒とも呼べる暗い色をした棺が、雪に照らされ、宙に浮いているのだ!
「なんで、棺桶なんかが、空に……」
動揺のあまり、尻餅をついてしまう。泥土がいくらか制服の袖に付いたが、それにかまうほどの余裕はすでに失われてしまっていた。
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