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不良
僕はいそいそと彼から視線を外して最寄りのコンビニへと向かったのだが公園が見えなくなる曲がり角で、試しにチラリと彼の様子をうかがってみた。
が、やはり泰然自若として月を眺めている姿に軽くため息をついた。
「そんなに月が好きなのか」
独りごちた自分にまた羞恥心が沸き起こる前にコンビニへと歩を進めた。
コンビニの賑やかで世俗的な喧騒が今の僕が抱いた様なちっぽけなセンチメンタルなど払拭してくれるに違いないと信じたからだ。
だが、そこは少々喧騒に過ぎた。
数台のバイクとそれに跨る見るからに不良とおぼしき青年達が屯していた。
リーダーとおぼしき青年は髪を金色に染めていて背はそれほど高くないものの、雰囲気からしていかにもな態度である。
他のお仲間も赤やら青やらに髪を染めているがリーダーと同じ髪色にしないのは畏敬の念なのか単純に被るのがイヤなのか知らないがどれも人目を引くには十分なインパクトはあったが似合ってるかと言えばそうでもない。
そんな風にチラチラと観察しているとリーダーとおぼしき金髪がやおら近づいて来た。
不味い、おそらく弱みを見せればつけ入れられるに違いないと直感し何時もより颯爽と歩こうとしたが、緊張で滑稽な歩き方になってしまった。
「おい」
き、きた!
「な、、、なんですか?用事がないなら先を急ぎますので」
「用事があるから止めてるんだろが?」
「あ、そうですよね」
僕は精一杯の愛想笑いをしたあと、すぐさまコンビニに駆け込もうとしたのだがそれを見越されたのか腕を掴まれた。
「い、なにを?」
「何行こうとしてるんだよ」
「ぼ、僕がなにかしましたか?」
「はは、面白いやつだな。したさ、挨拶がなかった」
「お、面白くはないですよ。それに知らない人に話しかけられても返事をしないように教えられます」
「なんだそりゃ?教育がなってないなぁ。挨拶は大切だろ」
「と、時と場合によりますよ」
「今がその時だとは思わないか?」
「思わないね」
そう言って忽然と現れたのは先程の彼であった。
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