彼と不良

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彼と不良

「思わないね」 そういった彼の言葉には緊張も威圧もなく、ただただ自然にそこにポトリと置いた様な台詞であったので不良達も今の状況を把握するのに数秒間を要した。 「誰だお前?こいつの知り合いか?」 「いや、全然」 確かにその通りだが、そこは嘘も方便で知り合いと言ってくれても良さそうなのにと都合の良い考えを巡らせていると不良のリーダーは解ったとばかりに頷く。 「ふん。じゃあ正義のミカタって訳だな」 「いや、違うけど」 これまた普通に返されたので不良のリーダーもだんだん苛つきはじめている。 「じゃあ何しに来た?殴られたいのか?」 「見知らぬ人を殴るなんて君たち不良だね」 そんな当たり前の事をさも普通のトーンでかたる彼ははじめてあった時と同じ不思議な雰囲気を漂わせていた。 「は?あたりめーだろ?みたらわかるだろ?バカなのか?」 不良のリーダーはさも当然とばかりにそう巻くし立てた。 「それが問題なんだよね、なぜ見たらわかるんだろう?君たちは社会のルールに縛られたくなくて不良をやってるんだろう?なのにみたらわかるほど不良のテンプレートに従ってるわけだ。おかしいね?レールからはみ出したいと思ってるのに、また違うレールに自分から乗るなんて」 その台詞を聞いた不良達はみるみる余裕がなくなってその顔にはイラつきが滲みでていた。 「なんだてめぇ」 不良のリーダーはもう一度言った。
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