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「あ、私が、余計な事言っちゃったみたいで、その、怒らせちゃったみたいで」
アリサが焦って弁解している。肇は何故アリサが自分を庇うのか分からなかった。
店長は肇とアリサを交互に見て、盛大にため息を吐く。
「お前らなら、そういうトラブルもなく仕事できると思ったんだがなあ」
「何の話だよ」
敬語、と店長に睨まれ、肇はスイマセン、と目をそらす。
「お前がゲイだからアリサを雇っても大丈夫だと思ったんだよ」
従業員の、男女の色恋沙汰でトラブルになることは少なくない。肇の恋愛対象は男性である為、例えアリサが肇に好意を持ったとしてもそういったトラブルは回避できるだろうと店長は踏んでいたのだがーーー
やはり肇には何の話だかさっぱりわからなかった。
「確かに、アリサは人ん家の事に首突っ込みすぎだ、反省しとけ。ハジメ、店のモン壊したらただじゃおかねえからな」
さっさと着替えてこい、と店長はロッカールームから出てった。2人の若者の青春模様に頭を痛めながら。
「ごめん。言いすぎた。でも、アンタの為を思って言ったの」
アリサはピンクの唇をキュッと結んで、エプロンを急いでつけると小走りしていった。
アリサは少なくとも、肇のアルバイト先での勤務態度やピアノの腕は評価していた。それが好意に変わるとは本人も思ってもみなかったことだったが。
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