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ちょっとした問題が起こった。
ユウジが、肇のアルバイト先の楽器店に来たのである。それ自体は問題ではない。
楽器店の店長とユウジは知り合いだ。昔一緒にバンドを組んでおり、肇もそのメンバーだった。来店することはなんら不思議ではない。
そして、同じくアルバイト店員のアリサともユウジは鉢合わせる。
お互い軽く会釈をしたあとアリサは「あれがユウジさん?」と羽根のようにゴテゴテしたつけまつげを羽ばたかせながら肇に訊ねた。会うの初めてだっけ、と思いながらも肇は肯定する。
「アンタって面食いだったのね」
「いや、セックスするのに顔は関係ねえよ」
見た目はいいに越したことないけど、暗くすればわかんないし、と事もなげに続ける。
「やっぱりアンタ最低・・・」
顔を引きつらせるアリサを無視して、肇はレジ横の棚にあるステッカーの補充を始めた。
店長に呼ばれたアリサは、ユウジも交えて何やら3人で話している。
それを横目に見ながら、こんなクズでさえ真面目に仕事してるのにお前らときたら、と肇は頭の中だけで愚痴を垂れ流すのであった。
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