第二章/ひとつがふたつに。

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* カップの中、うようよと泳ぐように揺蕩たゆたう黒い塊を見つめる。 「ん~!超美味しい~」 うっとり。そんな形容詞が当て嵌まりそうな表情を浮かべる莉奈を横目で窺う。 「並んだ甲斐があった!美味しすぎてやばい~」 「何気に私、タピオカって初めて食すかも」 スキップでもしだしそうなくらい幸せ気分に浸っている莉奈に続いて感慨深そうに呟かれた美鈴の言葉に、心の中で“私も”と返事をした。 今日は三人ともバイトがオフの日だったから、大学が終わった後久しぶりに駅前へと繰り出していた。 一番のお目当ては最近オープンしたばかりのタピオカ専門店。オープンする前から莉奈が行きたいと騒いでいて、今日やっと実現した。 …それにしてもタピオカって不思議な食べ物だなと思う。 確かイモ科の一種と聞いたけれど、にわかには信じ難い。 「これはリピ決定だな~」 「…、」 誰に言うでもなく独り言のようにそう言う莉奈には申し訳ないけど、私はもう飲むことはないだろうなと思った。 美味しくないとかではなく、弾力が凄すぎて…顎がとても疲れる。
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