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…なんだ、俺。
自分で思ってるよりもずっと、紬ちゃんのこと――…
そこまで考えたところで、動かしていた足をピタリと止める。
家のドアの前にしゃがみ込む小さな人影。目を凝らして見れば、そのシルエットが今の今まで頭の中に思い描いていた人物と重なった。
「……紬ちゃん?」
静かに名前を呼べば、紬ちゃんはすぐさま立ち上がり「…先輩!」と鈴を鳴らしたような声を響かせながら此方に駆け寄ってくる。
「バイトお疲れ様です」
さっそく労いの言葉を掛けてくれたけれど、俺の頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされていた。
「え、同窓会は?」
困惑に満ちたままそう問いかければ紬ちゃんはサラリと「終わりました」そう言う。
「…ああいうのって三次会くらいまでないっけ」
「多分他の子は行ってると思うんですけど、私は一次会で抜けてきました」
“なんで?”と問いかける前に、カサリと音を立てながら俺の前に差し出される袋。
その袋に印字されている店名は何度か耳にしたことがあった。
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