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第一章/痛みにしがみつく
「ちょ、柳先輩来たっ!」
がやがやと賑わいを見せる学食の中、興奮状態でそう耳打ちしてきたのは大学内でいつも行動を共にしている莉奈。
莉奈の視線を追うように目を向けた先、券売機に並ぶ三人の男の人を捉えた。
「今日も超かっこいい!」
莉奈はひとつ年上の柳先輩の猛烈なファンだ。
顔を赤く染めながらバシバシと私の腕を叩いてくる。普通に痛い。
憧れの人を一目見れて嬉しい気持ちは分からないでもないけれど、叩くにしてもせめてもう少し力を弱めてほしいと思う。
「まあ確かにあの三人は目の保養だよね~。みんなキラキラしてる」
莉奈に言葉を返したのは美鈴。
美鈴もいつも行動を共にいている友人だ。私たちは基本、三人でいる事が多い。お昼休みは特に。
頬杖を突いて“あの三人”を眺めながら呟かれた美鈴の言葉に、心の中でうんうんと頷く。
美鈴が言う通り、あの人たちはキラキラしてると思う。纏うオーラが違うというか、なんというか。こんなに人が溢れている中でも容易く見つけ出せてしまうのはきっとその所為だと思う。
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