第一章/痛みにしがみつく

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「三人ともかっこいいけど柳先輩が一番かっこいい!美鈴もそう思うでしょ!?」 「んー…まぁ。あんまりタイプじゃないけど、綺麗な顔してるなぁとは思う」 「あの顔面がタイプじゃないとか正気なの!?」 「正気ですけど」 「信じられん…」 「私、もっとゴツくて猛々しい男が好きだから」 「あーね…」 真逆のタイプを言い合う二人を傍観しながらパックジュースを吸い上げていた私に突然莉奈の視線が向く。その大きな瞳を向けられると、いつもどきっとしてしまう。なんせ眼力が凄いから、莉奈は。 「ねえ、(つむぎ)は?どういうのがタイプ?」 なんだかこの話題振られそうだなとは思っていたけれど、見事に予感が的中してしまった。 「そういや紬のタイプって聞いたことないなぁ。私も聞きたい」 莉奈だけならまだしも、美鈴にまでそう言われてしまうと切り抜けれない事が始まる。 興味津々な面持ちで私の言葉を待っている二人にどう答えればいいのかと考えあぐねる。そんなに期待されても面白い返答なんか出てこないのに。 「えーっと…」 ポリポリと頬を掻きながら歯切れの悪い声を紡ぐ。
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