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「この地域の宿命というべきものですか」
「そんな顔をするな、勝頼」
言って謙信が勝頼の肩をどやしつけてくる。傍らに控える土屋昌恒が少しだけ反応した。
「来年、雪が解ける頃、わしは能登から越前に兵を進める。お前は信濃から岐阜に向けて進攻しろ」
「何やら、高揚しています」
勝頼は言って、顎を引いた。
「俺は今、龍を味方につけたのですね」
勝頼はがっちりと謙信の両手を握った。謙信が強い力で握り返してくる。一際強い風が吹いた。空から、小さな雪が舞い落ちていた。
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