理想のオレンジ

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何から問うべきか。 ガシっと傍に寄って来たハルのシャツを掴んだ宇汰は高級そうなそれが皺になるだとか、ヨレてしまうかもしれないと言う危惧も全く頭には無いらしく、いっぱいいっぱいになった感情を少しずつ吐露していく。 「あ、の、俺、裸なんですが、決して、趣味とか、じゃなく、」 「はは、何それ」 「あ、あ、そだっ、こ、ここ、どこですかっ?あ、俺もしかして、ハルさんに迷惑掛けて、なかったですかっ」 「うん」 「そう、ですか…!良かった…あ、あ、でも、あの、記憶が…あまり…無くて…」 「そっか」 「…………いえ、あまり、じゃなく、殆ど…無いんです…」 「そう」 「…………えっと…その、あと、あと…」 相変わらず眼を細めてニコニコと微笑むハルに対して募るのは、違和感だ。 何故こんなテンパった全裸の成人男性を前にして、楽しそうな、しかも極上ばりの笑顔を見せるのか。 「あと、何?」 「……何か…俺の…股の間、から、」 「え?あ、そっかぁ」 続きを促され、一番疑問だった己の下半身事情を告げるべく宇汰の視線が馬鹿正直にすっと下に向けられたが、不意に肩を掴まれ身体はハルの方へと引っ張られた。 頬と頬が触れ合う距離に宇汰の身体が大袈裟な程にびくっと揺れ、大きく見開かれた眼には至近距離で見てもきめ細かさの分かる肌と長い睫毛。そして、 「掻き出したつもりだったけど、奥のが流れてきちゃったかぁ」 細められた薄緑色。 「……は?って、ぎゃ…!」 何を言われたのか、理解しようとする前に腰に巻いていたシーツが剥ぎ取られたか、かと思ったら、すすっと腰から尻に掛けてその丸みを楽しむ様にハルが指を滑らしていく。 「ま、待ってっ、ハルさん、あのっ!」 「ウタ君は俺の首に手ぇ回して。ぎゅってするみたいに」 耳元でそんな事を言われたら溜まらない。 躾けられた犬の様に条件反射で、すぐさまハルの首に腕を回し、ぎゅうっとしがみ付く宇汰に笑い声が聞こえた。 けれども、 「じっとしててね」 と諭す声と同時に、 ぐちゅ 「……………はっ、」 聞いたことの無い音が届く。 いや、それがどこから届いたかなんて、理解したくはない。したくないのだが、その発信源である場所に意識が集中してしまう。 「は、ハルさん、あ、あの、」 「本当だ、結構残ってたんだね。我ながらすごい量で笑えるわ」 いや、笑うのは後回しにして頂きたい。 それよりも、それよりも、だ。 「ゆ、指…っ、抜いて、そこ、」 恥ずかしさで眼がチカチカする、自然と涙が込み上げる。 (う、嘘…だろっ!) まさか… まさか、自分の尻に、ハルの指が入っている、なんて。 しかも入れているだけでは飽き足らず、中で指をぐりぐりと回転させたり、ぐっと内壁を押したりと脳がパチパチと音を立て、呼吸が上手く出来ない瞬間すらある。 ひゅっと息を飲み、ハルの肩を押し戻そうとするも、見計らっているのか、偶然なのか、二本目の指を挿入させてきた。 「―――ーっ、は、ハルさん!マジで、」 勘弁してほしい。 こんな尻を弄られるなんて、小学生時代、インフルエンザに罹り、あまりの高熱に母が最終手段だと左手で押さえつけられ、唸る右手で座薬を突っ込まれた時以来だ。 あの時も恥ずかしさと恐怖で泣きながら抵抗したのを覚えているが、これはその比ではない。 恥ずかしさと恐怖は勿論の事、 (何!?なん、でっ!?) 「あは、また気持ち良くなった?」 ハルの指がぐいっと掻く様に動く度、びくんと身体が浮かぶ。そして、ゆるりと反応する、我が息子。 (い、意味が分からんっ!!お、お前そんな自己主張するタイプじゃないだろっ!!) 混乱する意識の中々、壊れたみたいに涙が出てくる宇汰は、その原因であるハルにしがみ付き、鼻を啜る。 だが、 「ほら、出るよ」 「…へ、あ、ぁ、」 広げられた尻穴からの排泄感。 どろっとした内股を流れる感触に、もう言葉が出ない。 口を開いたまま、ハクハクと浅い呼吸を繰り返す。 「処理が甘かったみたいでごめんね、気持ち悪かったかな」 なのに、この甘い声。 しかも、自分にしがみ付く宇多の耳に軽く口付けする。 「お風呂入る?一緒に」 結構です! それより、この状況の説明をこと細かく、はしょる事も無く、理解できるようにお願いします!! と、言いたいはずだが、 「…は、い」 首筋に感じる吐息に流されるように、頷く宇汰は、またグスっと鼻を鳴らした。
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