はじめに。

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はじめに。

私はさまざまな民泊を利用します。 もちろん、人間の暗部に踏み込む取材をしに出掛けるためです。 旅館もそうでしょうが、やはり特に民泊は怖いと思いませんか。 民泊側のことです。 どんな客が泊まりに来るかわからないのに、だれのことでも泊めなければならない。 基本的にはそうですよね。 493c25de-db17-4dc3-94b0-fdb75e219bd9 昔、お宿の方からこんな話を聞いたことがあります。 やけに金離れのいいお客さんが泊まったことがあったそうです。 何かにつけ、チップのようなものをくれる。 食事のときなら、食べ終わった食器の下にチップ、お風呂のときなら、脱衣所にチップ。 なぜだと思いますか? 指紋を残すな。 このカネをやるから黙っておけ。 そういうことだったそうです。 今度、別のお宿の方はこんな話を聞かせてくれました。 そのお宿はさっきのお宿からは遠く離れた土地にあります。 やけに金離れのいいお客さんが泊まったことがあった、そういう話です。 私はあれと思いました。 でも、知らぬそぶりで話を聞きます。 まったく同じ話なんですね。 指紋を残したくない客が、私の少し先を旅している。 そう思うとわくわくしました。 いつかどこかで鉢合わせになるかも知れない。     *********** さて。 私の出自は明かしませんが、実は一度だけ大きな買い物をしたことがあります。 『家』です。 といっても、田舎の空き家は安いのです。 無料なんてこともあります。 固定資産税など、面倒な支払いはありますが。 私が買った家は、もともと宿でした。 といっても、いわくつきの宿です。 ふだんから私の文章を読んでくださり、お付き合い頂いている方はご存じの通り、私は刺激中毒、危険中毒です。 危ない家となれば、住んでみたいと思うでしょう。 そのいわくつきの宿を買い、 さりげなく民泊を営んでみたのです。 いわくつきの宿なんて、誰も泊まらない。 そう思いますね。 ですが、想像してみてください。 その村に迷い込んでしまい、もしくは故意に逃げ込み、 泊まる場所がほかになかったら? ものすごく安い宿があったら、やむを得ず泊まりませんか? 私は儲けたいのではなく、やむを得ず宿を利用する人間に会ってみたかったのです。 ea7bd726-b4c3-44eb-98eb-7ed3c8b95905
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