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小説家の伊門冬は「家」という小説を出版してから少し有名な作家になった。
今日も伊門の家で雇っているお手伝いの成田紅が入れてくれたオリジナルブレンドコーヒーを飲む。
成田は、自分好みに調合した豆をフライパンで炒めてからそれから引いていくこれを毎日伊門やお客のためにやっていた。
何よりも自分の趣味でもあった。
伊門と成田はこのコーヒーの繋がりから成田がお手伝いに来た理由でもあった。
伊門冬は入れてもらったコーヒーを飲むと成田が「美味しいですか ?」と聞くと「うん」と答える。
成田はにこりと優しい顔になる。
家の中がしばらく、静まりかえってるとこの家で一番の音のインターホンが鳴り響いた。
成田は足早に玄関に向かった。
成田と一緒に居間にやってきたのは、大きな図体して七三分けの太った男性出版社の木田だった。
木田は伊門冬の担当で頻繁にこの家にやって来ていた。
木田は大きな声で「先生! おはようございます。執筆は順調ですか?」と今月で最後の連載小説の執筆の具合を聞く。
伊門は炬燵に入って黙って執筆を続ける。
それを見た木田が「すみません。大きな声を出して」と口にチャックをするジェスチャーをする。
そのまま、居間のソファーに座り成田がソファーの前に置いてある硝子テーブルにコーヒーを出すと木田は「ありがとうございます。私が、先生の家にくる楽しみの一つですよ。勿論、一番は先生の原稿ですけどね。」と言って小指を立ててお洒落なコーヒーカップをもって一口飲むと「ん~うまい。」鼻から息をもらすと成田が「ありがとうございます。」とお礼を言う。
成田は「木田さん。チョコレート食べます?」とテーブルに置くと
「ありがとうございます。私チョコレートにも目がないんです。あ、これはブラックん~」と言い食べた。
そして「ん~ベリーグーチョコ」と鼻穴を広げて小もないことを言う。
外は雨が強くなってきていよいよ本降りになりそうだった。
まだ、やまない雨からしばらくたつとまたしても、インターホンが鳴り響いた。
ソファーに目を瞑っていた木田が嫌な予感がしたのか指を動き出した。
成田と一緒に居間に現れたのは
顔が長くて身長も高めな、またしても声が大きい男性だった。
男性は、金村光と言って刑事をやっていて、伊門冬が推理を提供していた。
そう!伊門冬のもうひとつの顔が妄想推理というやつで、自分だったらどのようにするかと現場に行かずに話だけを聞いて推理をする。
当たるときもあれば当たらないときもあった。でも、それでも行き詰まるとこうやってやって来て頼りにする。
金村は「おはよう! 生きてるか?」と声を張って言う。
ソファーに目を瞑ってる木田を見て「お! 大仏も来てたか?」と木田を大仏呼ばりすると、木田の眉毛がピクッと動いて「貴方こそ、何しに来たのですか?また、先生の邪魔をしに来たのですか? 」と言うと
伊門が小声で「出来た。」と言うと金村は「出来たってさ。 」と木田に顎で言うと木田が目を見開いて「先生!出来ましたか?」と恐いぐらいの小走りで伊門に近付き原稿を素早く確認する。
「いいですね。お疲れ様でした。これで、この連載は終了ですね。また、何かありましたらよろしくお願いします。」と礼をして去ろうとする。
金村は「終わりか?そうか、てか、何でメールで原稿送らないんだ?いちいち来なくていいだろ大仏が」と言うと
木田が「貴方は何も分かっていない。先生は私に会って原稿を渡したいからですよ。ね?」と伊門に向かってニッコリとして
「では!」と去ろうとするとき金村に指をさして「邪魔するなよ。」と言って帰って行った。
金村は木田が帰ったあとに「大仏に直接渡したいからなのか?」と成田に聞くと
成田は「ん、多分先生が手書きよくて機械が苦手だからだと…」と伝えると金村は笑って「やっぱりな。」と言う。
金村は「伊門!今日も事件宜しく。」と言うと伊門も「いいよ。」と自分の首に巻いてある白いマフラーを触りながらこたえる。
雨はやまなくて強くなっていった。
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