プロローグ

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気の遠くなるような長い年月の中で、私は何を得たのだろうか 儚くも美しいと思っていた世界は、人の私欲にまみれ、薄汚れてしまっていた 何と愚かな、何と傲慢な しかし、人の罪は途絶えることを知らない もうこのような世界など見たくも聞きたくもない 人は愚かだ 悲しいほどに愚かで、それ故にどこか愛おしささえ感じる 人の子らを心の底から憎めないのは、私が、この世に生きるものたちの"思い"から生まれた存在だからなのだろうか では、眠ってしまえ 目を閉じ耳を閉じ、眠ってしまえ 時が来るまで深い眠りについてしまえ ——ああ、でも、願わくば 次目覚める時は、彼女が、ーーが、幸多き人の生を歩めるように、人の縁に蝕まれることのないように ーーに祝福あらんことを
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