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「お疲れ様~!!!」
舞台袖で小躍りする座長が踊り子を出迎える。
観客の大喝采に気を良くしたようだ。
「ハイ、みんなお駄賃だよ~!!ここは特上客ばっかだから明日も気張るんだよ~!!」
キャーと黄色い声が上がり、踊り子たちは次々にチップを受け取って行く。
「さぁ、アイーダも。今日も絶好調だったね~!!」
しかし、当の宵の翠玉・アイーダは舞台で掻いた大量の汗を木綿布で拭うと、舞台袖に用意していた自前の真っ黒なローブで身体を覆い隠しさっさと立ち去ってしまった。
「もう!アイーダったらそんな辛気臭い恰好、いい加減やめなさいよ!」
「そうよ、折角いいカラダしてんのに~!!」
「そんなだから未だに処女なのよッッ!!ほとんどの客がアンタに食いついているっていうのに!!!」
同僚たちの言葉を聞き流しながら、アイーダは王宮内の宿泊部屋まで急いだ。
壁に洋燈が燈された長い廊下をサンダル履きの脚でひた走る。
(早く部屋に戻らなきゃ)
焦る気持ちと一緒に舞台で浴びた不快な声が脳内を支配した。
『いや~、実に美しい!是非とも一夜』
『あの豊満な乳房にやさ腰!!おおよそ神が遣わした最も極上のものではないか!』
「・・・っ」
もう嫌というほど聞いてきた男たちの下心と本性。
どんなに舞台数を踏んでも寒気がする。
「アイーダ!!」
バッと飛び掛からん勢いで進行方向の角からジャービル王が飛び出して来た。
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