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「なっ、なにをするか小童!!ワシはこれからアイーダとっ!!」
「黙れよ色ボケ国王が!!彼女が嫌がってんの分からないのか、アンタの目は節穴か老眼なのか!?」
喚く国王に臆する事無く若者は刃向った。
「ぐぬぬ、小童が無礼にも程があるぞっ!!おまえのところは金山の取引に来たんじゃったな!だったらおまえと取引せぬようヘサーム王に進言するまでじゃっ!!」
「そんなっ・・・」
「アイーダ、おまえがワシと情交するなら万事うまくいくのじゃぞ」
思わず声を上げると、若者の後ろに隠れる自分を覗き込むように国王は身を乗り出した。
「・・・・・・っ」
覚悟を決めるしかないのか、国王の前に出ようとした瞬間。
「ジャービルさまー!!」
「なんじゃい!騒々しい」
「ヘサーム陛下が御呼びです」
「くそっ!覚えておれ小童!!」
ジャービル王は苦々しい顔で若者を一瞥し、呼びに来たお付きの者とその場を離れて行った。
姿が見えなくなり生理的な不快感を伴う緊張感から解放される。
「はぁ、助かったわルト。いつもありがとう」
「いいよ、気にしないでアイーダ。ごめんね、もっと早く来られれば良かったんだけど。兄さんたちと交渉の件で打ち合わせてて。あ、アイーダも舞台袖で待っていてくれてもいいんだよ。その方が最初から僕が守ってあげられるしさ」
「仕事で逗留している人に毎回甘える訳には行かないわ」
「他人行儀だなぁ、君だって仕事で居んだし僕ら知り合って一ヶ月経つだろ?ただの友人だけどさ」
ルトは気さくに笑った。
垂れ目で子犬のように人懐こい青年は同じくらいの目線の高さ、茶色い瞳が優しい眼差しを合わせてくる。
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