第一章・輪廻の種子、麗しの舞姫

16/41
前へ
/250ページ
次へ
 締め切ったカーテンの隙間から白い朝日が差し込む。  異国情緒に彩られた室内。  どう見ても自分がいつも寝起きしていた殺風景なアパートではない。  そんな不毛な行動を何十回繰り返してきたのだろう。  惨めったらしい気持ちで目一杯の心を何とか持ち上げ、練習着を兼ねた私服に着替える。    ローブで全身を覆い、昨晩同様ドアの鍵と自前の南京錠をがっちりと掛け、食堂へと向かう。  白い石造りのどっしりとした壁の続く通路。  どの客もこの時間はまだ夢の中。  宴会終了後、男女共に目当ての相手を連れ込み、一晩中身体を交えているのだから。  歩みを進めれば聞こえるのは自分の足音と鳥の囀り、朝の澄んだ空気は気持ちがいい。  朝日のカーテンが窓から長くその姿を見せる。  微風が心地いい・・・。  渡り廊下に差し掛かり佇んでいると、来賓客用の部屋から踊り子仲間であるジャスミンが出てきた。 (!!?)  彼女の姿に目が点になる。  寝台の白いシーツを纏っているではないか。  アイーダは大慌てでジャスミンの元に走った。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加