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「どっ・・・、どっちも、無い!!」
「ええ~?なんでよぉ~、いつまで処女でいるつもりぃ~?女は男に抱かれてナンボ!その方が美しくなるわよ~!アイーダなら十割増しよッ!!」
「そうなれば一座は尚更儲かるわいッ!!」
座長が食事そっちのけで十露盤を弾き出した。
「アイーダ、どちらでも良いからヤッておいで」
「座長ッ!!」
いつもの事ながら恥ずかしくて顔が熱くなる。
「やっだ、顔真っ赤にしちゃってか~わいい!!踊ってる時とはほんっと別人よね~」
「だからこそ男たちは喜ぶわよぉ~!気持ち良くなれるし、きれいになるし、一石二鳥三鳥よ!」
今日は朝から厄日を更新中だ。
(ほんとうに、なんでわたしこの世界にいるんだろう)
どう考えても自分程この世界に相応しくない人間はいないと思う。
「んじゃぁあ、もしぃ~ヤるんだったらどっち?」
「だから!ルトは友人だし、ヘサーム王は論外よッ!」
「ええ~?なんで~?いいじゃないヘサーム王!!」
「おっ王様だし、踊り子なんか相手にする訳ないじゃないッ!!」
「そんなの寝台の中じゃ、み~んなでも一緒よ~!裸なんだからぁ!!脱いじゃえばみ~んなおんなじ!」
「それに、ヘサーム王いっつもアンタのこと情熱的な目で見つめているじゃないのッ!!」
「情熱的って・・・」
情熱的、というより恐怖しか覚えない。
思い出しただけでも背筋が凍る。
あの鋭い瞳―――。
絹のベールに隠れて、その表情は全然分からないけれど、とにかく怖い。
それだけは分かる。
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