50人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
クソ親父が!!
その『人間』によってソンウの生活は一変したのだった。
弟が小さかった頃は母が亡くなり寂しいと泣くのを俺があやして親父ともよく話していたと思う。弟が成長して手がかからなくなると仕事が忙しい親父との会話はしだいに無くなっていた。
いいお兄ちゃんでいた反動だろうか気づけば俺の周りはガラの悪い友達と遊ぶようになり家に帰らないことも増えていった。
タイミングがいいんだか悪いんだか…久しぶりに帰っていた家で親父が連れ帰った『人間』を紹介されたのだった。
平凡な顔で表情が乏しい俺よりは身長が少し低い青年で親父のお節介で家に住むことになったのだが…彼のイカれた言動に気づくのに時間はかからなかった。
青年の言葉遣いが急に変わったくらいまでは無視できたのだが…
いつのまにか弟が手懐けられていて「兄さん好みのタイプのウィッグだよ」と長いストレートやカールのある数種類の獣耳つきのウィッグを渡すから青年は嬉々としてその髪をつけて女の服を着て化粧までして俺を追い回すようになり―-…
いや、可愛いけど!?
オスだ!
似合いすぎて雌の獣人にしか見えねぇけど雄なんだ!!!
「なぁ、ソンウ。……なにアレ? カワイイ獣人がついてきてるけど」
とニヤニヤした諸種(いろんな種族が混ざってわからない獣人)である悪友が俺たちの後ろから獣人スタイルで追いかけてきている『人間』と俺を交互に見ている
「あんなん姿だけど、オスだからな!」とソンウが言えば
「へぇー…けど俺、性別なんか気にしないしぃ?」
え?性別って大事じゃないの?!
とソンウが考えてる間に獣人スタイルの青年に近づき口説いている…おい、やめろ俺を面倒なことに巻きこいむな。
「ソンウより俺のが良くない?」
たしかにカッショクハイエナ種のソンウより悪友のが獣人的にはモテル容姿なのだが『人間』的にはどうなんだ?
と青年をみてば「良くない!」と言いきり俺の方へ逃げようとしているが腕を掴まれて、そのまま悪友の胸に抱きこまれしまう。
後ろから抱きつかれて青年はプルプル震えている。
その震えがピタリととまって
「なぁー・ん・で・俺・がッ・毎回・毎回ッ! 肌を撫でられたり野郎に抱きつかれてるんだろうなぁ"?!」
言葉を1つづつ区切るような低い声が聞こえると、悪友は容赦なく青年に背負い投げされたのだった。
「ッチ!今度はアイツかよ!!またこんなヒラヒラした服きやがってッ!」
と青年は嫌そうな顔をして自分のスカートを摘んだ後、投げ飛ばした悪友に近き無造作に上着とズボンを剥ぎとると、その場で着替えてたち去る後ろ姿を驚きの表情で見つめていたのだった。
服を奪われた悪友は言葉もなくパンツ姿でプルプルと震えている。自業自得だが、青年の捨てていったスカートと獣耳のウィッグを震える手で装着し全く似合わぬその姿で泣き喚きながら猛ダッシュで帰っていったのには同情する。
そして家へ帰り自分の部屋に行けば隣のチソンの部屋から「ダメ!兄さんが、ァ、帰って来たからァッ!」と艶めかしい声で言う弟の声が聞こえたのだが弟は彼女ではなく彼氏ができる年頃になったのかとジジ臭いことを思いながらイヤホンで音楽を流して音を遮断するのであった。
チソンの彼氏になど興味はなかったが、その答えはすぐに知れた。あの『人間』の青年である。
弟に濃厚なキスしてるとこを見たし(弟は背中を向けてたから俺に見られたのは気づいてない)表情に乏しかった青年が雄の顔をして、そんな顔もできるのかぐらいにしか思っていなかった。
なのに、なんで俺は女装癖のある弟の彼氏にストーカーされてるんだ!?チソンの彼氏なんだろ!
外泊する予定の俺は悪友の家まで来たのだが後ろにいる獣人スタイルの青年を見るとソンウの目の前で家のドアが勢いよく閉まったのは言うまでもない。
こうしてソンウは家で寝ることが多くなったのだが部屋にはプライバシーを守る鍵がないので侵入者をやすやすと招きいれてしまい眠りを妨げられ続けている。
頻度としては2、3日に1度のペースだが寝ている俺のベッドに潜りこんでくるソイツは大きめのシャツ1枚の姿で下はズボンを履いていないので足がむき出しである。
何度もソンウは「俺の部屋に入ってくんな!」と怒鳴ろうが嬉しそうな顔でうんうん頷くだけで数日後にはまた繰り返され…ある朝、俺の腕のなかに見知らぬ体温がありイイ匂いがしているのであった。
(ほんと意味わかんねぇ…チソンの彼氏なのになんで俺にまとわりついてくるんだか。つーかコイツ下着まで女物の変態なんだな。)
見下ろす青年はぐっすり眠っていて乱れた衣服から女物の下着が見えている。
と、青年が目をあけ自分の服装を見るとわなわなと震え耳が赤くなり
ッツ!!!
それをよけたのは本能だった。俺の反射神経に感謝だ。
自分から俺のベッドにもぐりこんどいて殴りかかってくるってどーゆーことだよ!!
彼は不機嫌な顔で舌打ちすると俺の部屋を出て行った。
そうして青年がきて5日目のこと俺は女装した獣人スタイルの彼の逆鱗に触れてしまい…
「俺は胸の大きい獣人がタイプなんだ」
とソンウが青年を拒絶した言葉が原因で彼は自分のペッタンこな胸に手をあてるとプルプル震えながら涙を浮かべ
「貧乳なだけだもんッ!揉んでれば大きくなるんだから!!」と言いはるから呆れた声で
「男の胸は大きくならない!」と言いきった俺が悪いのか
男扱いした罰として毎日、大きくならない青年の胸を揉まされて男の喘ぎ声を聴かされている。
どーしてこうなった!?
獣人スタイルの青年の服の中に手を入れているビジュアルが悪い。
こんな姿をチソンや親父には見せられねぇ。
誤解しかうまない!
青年に無理やりさせられている被害者は俺なのに、そうは見えないコノ状況・・・
獣人より力の弱い青年を相手に無理やり俺が胸揉んでるようにしか見えねぇのが最悪だ。
視覚的には誰が見ても青年が被害者であり俺が悪いと言うことになってしまう!!
俺に身を任せるように寄りかかり頬を赤くして照れながらも嬉しそうにしてるのがカワイイとか思わないからな。
ソンウは女装している彼を2度と男扱いしないことを心に誓うのだった。(このままでは俺まで変態扱いされてしまう。)
親父やチソンに確認したわけではないけれど青年のなかには《弟の彼氏》と《女装癖》と《無表情》が存在している厄介な『人間』であった。
最初のコメントを投稿しよう!